写真を趣味にしていると「いい写真が撮れたからWebに載せたい」「お友達に電子メールで送りたい」「年賀状にしたい」という事が往々にしてあります。そういう時、プリントならばスキャナで取り込めば送れます。しかし、リバーサルだと、透過原稿読取装置がないとうまくスキャンできないのが世の常スキャナの常。リバーサルのダイレクトプリントは硬調になるし、フィルムスキャナは高いし、Photo CDにするのも面倒くさいし・・・という人のための、ほとんど反則に近い写真のスキャン方法です。
こんな方にお薦め
先にお断りしておきますと、これから紹介する方法はすべてデジカメが必須です。と言えば、もう勘のいい方は分かったと思いますが、要するに「デジカメをスキャナの代わりに使ってしまおう」という事です。使用するデジタルカメラは画素数が大きく、マクロ(接写)撮影ができ、ズームがついていれば文句なしなのですが、VGAサイズ・最短撮影距離約20cm・ズームなしとのデジカメでも、Webに載せる・電子メールで送る・ハガキのスミにちょこっと載せるといった程度なら充分実用になります。
まず、プリントからのスキャンですが、これはもう何も言う事はないでしょう。写真を適当なところに置いて、ぱち、っと撮るだけです。マクロ機能がついているデジカメの場合は結構近くまで寄れますから、大きさが小さすぎてしまうという事はないでしょう。マクロがついてない場合はなるべく近寄って撮り、ズームがついている場合は最短撮影距離との組み合わせで、なるべく大きくなるように撮影します。
画素数の少ないデジカメの場合は、どうしても撮影領域いっぱいにならない事がありますが、そういうときは素直にあきらめてトリミングしてください。印刷用途にはちょっときつくなりますが、Webや電子メールで送る程度だったら充分実用になるでしょう。写真を大きく焼き直せば問題は解決しますが、それだったらまとめてPhoto CDに焼いてもらった方が安かったりする事もありえるので、よく考えてからね。
昔、絹目の写真が流行った事がありますが、絹目よりも光沢仕上げの写真の方がきれいになります。ただ、光沢仕上げだと周りの景色が反射して写り込む事があるので、デジカメで撮ったものをよく確認してください。白っぽい服を着ていると、自分が写真に反射して写りこむこともあります。そういう時は黒っぽい服に着替えましょう。フラッシュも思いっきり写り込むので発光禁止にして撮影します。デジカメならその場で確認してなんぼでも撮り直しが効くので、こういう用途(要するに複写)では銀塩に比べて有利です。
リバーサルフィルムで撮影するような人は、だいたいライトビュアーとルーペを持っていると思いますので、これを使います。デジカメがマクロ(接写)撮影できるようなら、フィルムをビュアーの上に載せて、デジカメで撮るだけでなんとかなる場合もあります。
なんとかならない場合は、フィルムの上にルーペを載せ、その上から撮ります。つまり、普通に目でルーペをのぞいている状態にして、目の代わりにデジカメを置くというイメージです。天体撮影や顕微鏡撮影で「コリメート法」という撮影方法があるのですが、原理的にはいっしょです。この時、視度調整ができるルーペを使っていて、なおかつデジカメのマクロ機能が貧弱な場合は、要するにデジカメが遠視だ(笑)ってことですからルーペの視度は遠視気味にした方が楽です。
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ルーペの倍率は通常使う4〜5倍内外が使いやすいでしょう。あまり倍率が高いと像の歪曲がひどくなります。また、端の方ほど歪曲がひどいのが普通ですから、大きいルーペの方が有利です。ルーペの値段も高くなるんですが。
光源はライトビュアーがありますから、フラッシュは当然発光禁止。それと、フィルム表面に部屋の中のものがこれでもか、これでもかと写り込むので、部屋は真っ暗にした方がいいです(テレビの撮影と同じ理屈)。さらに、ライトビュアーの明かりがデジカメ本体を照らし、デジカメ本体がフィルムに映り込んじゃう事もあるので、そういう場合はライトビュアーの不要部分(なんか変な表現だけど?)を黒い紙で覆い、それでもだめな場合はデジカメを黒い紙で覆ってください。もちろん、レンズの部分には穴を開けてね。
うちのデジカメはオリンパスのC-420Lですが、こいつはご丁寧にレンズの周りが銀ぎら銀になっていて、何をやってもこの部分が映り込んじゃうので、結局、レンズの周りを黒く塗りつぶした紙で覆いました(涙)。そうやって苦労して撮った(スキャンした?)写真がこれです(笑)。
この調子でネガもスキャンできます。もし、デジカメにネガ・ポジ反転機能があれば(あまり聞いた事ないけど)それを使うのが一番簡単。ない場合には画像処理ソフトで行う事になります。この時、プリントがあれば見比べながら色調調整ができますが、「プリントがないからネガからスキャンしてるんでい」という人は、根性で色調を調整してください。
デジカメでの撮影自体はリバーサルの場合と一緒なのでいいでしょう。ただ、画像の大きさは出来上がりの二倍程度にしておいて、後で縮小した方がよい結果になります。ネガをデジカメで撮影してヒストグラムを見ると分かりますが、見た目のコントラストが小さくなっていて(だからネガはラチチュードが広い)、実際に見られる画像にするためには、ヒストグラムを引き伸ばさなければなりません。
引き伸ばすとヒストグラムは櫛状になり、画像がザラザラした感じになります。ところが、これを縮小すると、隣接画素の平均が取られる事になって、ヒストグラムはきれいな形に戻り、画質も滑らかになります。まあ、高〜いフォトレタッチソフトを使っている人には関係ないことかもしれませんが、今あるソフトを活かそうという向きには、大き目の画像を用意するか、一度拡大して色調を調節してから縮小した方がよい結果が得られます。で、実際にネガをC-420Lで撮影してみたのがこれ。片栗の花です。
撮影したらフォトレタッチソフトへ突っ込んで、ネガ・ポジ反転してください。MicrografxのPhoto Magicで言うと、「イメージ」「反転」です。今回の場合、画像が回転しちゃってるので、ついでにここで直しておきます。これでなんとなく見れる画像にはなったと思いますが、ネガのフィルムベースは赤っぽい事が多いので、反転すると妙に青っぽくなります。ヒストグラムを見ると、
480X640 24,626バイト |
こんな調子になっていて、赤は暗い方に、緑は真ん中辺に、青は明るい方にものすご〜く偏ったヒストグラムになっているので、これをまず直します。Photo Magic 4だと「補正」「トーンバランス」がヒストグラムを見ながら調節できるので楽ですが、Photo Magic 6ではヒストグラムが一部入れ替わっているので注意(私の持っているバージョンだと、赤と青が入れ替わっている)。お気楽に済ませたい向きには自動クリップを使ってもいいでしょう。調整結果がこれ。
→ | 480X640 41,387バイト |
もう普通に見られる画像になったと思います。まだちょっと青みが強く感じられるので、青を弱く、赤を強く調節してみます。ついでに、色のノリが悪いようなので、彩度を上げてみます。これで遠めにはきれいな写真になりますが、ヒストグラムを見ると、
480X640 |
ものの見事にボロッボロですね。拡大画像を見てもなんだかザラザラした感じです。ここで、画像を1/2に縮小します。そうすると、あら不思議。
240X320 |
比較的きれいなヒストグラムになってしまうのでした。拡大画像からもザラザラした感じが消えています。縮小したせいで少しぽやっとした感じになってしまったので、最後の仕上げとして軽くエッジを強調しておきます。Photo Magicだと「イメージ」「エフェクト」の中に「シャープ」というのがあるので、これで強いエッジだけをちょっと強調すればよいでしょう。アンシャープマスクなんかも結構使えます。これで出来上がり。参考までに後からネガをCOOLSCAN IIIでスキャンしたものも並べておきます。ちょっと色を濃くしすぎたかな。
(ネガをC-420Lで撮影) |
(COOLSCAN III) |
片栗(原寸なのでマウスでつついても大きくなりません) |
ここまで力説しておいてなんですが、労力の割に報われないという話もあるので、これは最後の手段として頭の片隅にでも入れておく程度でいいでしょう(笑)。ちなみに、この写真は千葉市の泉自然公園で撮影したものです。周りの葉っぱは片栗の葉っぱじゃないのでご注意を。片栗の葉っぱは画面中央下、わらくずみたいなのの奥に、向こうから手前に向かって生えている、比較的大きな竹の皮模様の葉っぱです。
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