お星様の撮りかた

 このサイトの一部のページの背景には、星空の実写画像を適当に加工したものが使用されています。夜中にえっちらおっちら出かけて、天体望遠鏡を使い、数分から長いときには1時間の追尾撮影をやって、現像したリバーサルフィルムをPhoto CDにしたものを使っているのですが、考えようによってはものすごいもったいない使い方、と言うこともできるかもしれません。

 これでは撮影した写真も写っている星達も可愛そうなので、ここで供養・・・じゃない、ご紹介しましょう、というのがこのページの目的です。

お星様の撮りかた (12 Jun 1998)
使用した機材 (26 May 2012)
パーツの組み合わせ (26 May 2012)
撮影場所 (12 Jun 1998)
天候 (15 Oct 2001)

▲戻★ お星様の撮りかた

 お星様は基本的には天体望遠鏡を使って撮るわけですが、実際に撮影に使っているレンズは天体望遠鏡のレンズとは限りません。月などでは望遠鏡の対物レンズを撮影レンズにしたり、惑星などではさらに接眼レンズまで組み込んで撮影することもありますが、普通の星空のように、広範囲にわたって写さなければならない「星野撮影」の場合には、普通のカメラのレンズを使います。

 お星様は暗いので、長い間シャッターを開けてないといけません。でも、お星様は動くので、何も考えずに長い間シャッターを開けていると、星は点ではなく線になってしまいます。長い間シャッターを開けて、なおかつ星を点状に写したい場合には、どうしても「追尾」、つまり、星を追いかける操作が必要になります。

 この「追尾」の操作に天体望遠鏡を使います。簡単に言うと、望遠鏡にカメラを固定して、シャッターを開けている間じゅう望遠鏡で撮りたい星を追いかければ、その星は点状に写ります。これを人間がやるのは面倒くさいので、普通は赤道儀と言われる、「追っかけ機能付き三脚」みたいな機械にやらせます。

 正確には「三脚」っていうより「雲台」ですが。

 赤道儀の設置をきちっとやれば、赤道儀は自動的に星を追いかけてくれます。が、この設置が結構面倒だったりします。撮影レンズが広角レンズで、撮影時間が短ければいい加減でも大丈夫ですが、望遠レンズで撮影時間が長くなるときちっと設置しないと後々面倒なことになります。きちっと設置してしまえば、あとはシャッターを適当な時間開けて待つだけです。

 昔はフィルムによる撮影でした。フィルムは主にリバーサルフィルムを使っています。天体写真は露出を変えて何コマも撮影します(そんなの俺だけ?)が、使うのはその中のほんの数コマなので、現像するときはスリーブ仕上げにしてもらいます。Webページに載せるには適当な方法でスキャンしないといけないのですが、フィルムスキャナがなかった時代はKodakのPhoto CDを使っていました。そのうちニコンのLS-30(Coolscan III)を購入してスキャンするようになりました。

 今はデジタル時代ですので、スキャンする手間はなくなりました。 それ以上に、構図もピントも露出もその場で分かる、相反則不軌もない(少ない?)ので露出も短くて済む、一度に撮れるコマ数が多いなど、非常に楽になりました。 とりあえずISO1600で4秒撮ってみてから考えるか、みたいな。 フィルムに比べるとノイズが乗るという欠点がありますが、ダークフレームを引いたり、スタックしたりすることで改善できます。 それと、撮像素子面のホコリに気を使わないと、あとで全部台無しになっていることがあります。 フィルムの場合は1コマ犠牲になるだけですが。

▲戻★ 使用した機材

鏡筒 高橋製作所 FC-76E もらいもの (^^;; です。焦点距離600mm、口径76mm(F7.9)、蛍石使用の2枚玉アポクロマート。 ファインダスコープは6X30(8度)です。

2012年にFC-76D(DS・DC)という望遠鏡が出ましたが、これではなく元祖のFC-76です。 FC-76はセットによっていろいろとサフィックスが付いていて、説明書にはFC-76P・FC-76F・FC-76Eが載っています。 鏡筒は基本的に共通ですが、FC-76P・FC-76Fのスコープは7X50(6.5度)で、スコープの径が違うので、スコープ脚が違うはず。 高橋製作所のサイトを見るとこの他にFC-76DというD型赤道儀とのセット品もあったようで、ややこしさに拍車をかけています。

接眼鏡 Or18mm・Or7mm 付属品。 タカハシ純正のアッベオルソ。 ツァイスサイズ(φ24.5mmバレル)。
Explore Scientific
4.7mm 82度

口径76mmだと過剰倍率で150〜200倍くらいはイケますが、Or7mmだと85倍でサミシイのと、ハイアイじゃなくて覗きにくいので、Explore Scientificの82度4.7mm(φ31.7mm・アイレリーフ14mm)を買ってしまいました。 Or7だと月がはみ出すのですが、82度だと4.7mm(127倍)でも視野いっぱいに月が入るんですね。

Explore Scientific
24mm 68度
こっちは逆に広視野を目指したもの。 31.7mmバレルで見かけ視界68度とすると、焦点距離23.5mmくらいが限界になります。 これより長い接眼鏡は50.8mmバレルになります。 4.7mm 82度は目の位置に少しウルサイですが、こちらはそんなに広視野ではないのでのぞきやすいです。

FC-76Eはかなり古い望遠鏡なので、接眼アダプタはツァアイスサイズ(φ24.5mm)です。 そこにアメリカンサイズ(φ31.7mm、約1.25インチ)の接眼鏡を入れるため、ビクセンのカメラアダプタ36.4NST(今は廃番、43NSTならあるようだ)の拡大焦点撮影用の接眼レンズホルダーを使ってます。 要するに拡大焦点撮影時にいつも使っている24.5mmアダプタを抜いただけですが。

赤道儀 高橋製作所 EM-1 同じくもらいもの、っていうか、望遠鏡といっしょにもらいました。ちょっとペリオディックモーションが大きいみたいで、拡大撮影で長時間露出をやると、赤経方向に像がぶれます。別売りの極軸望遠鏡もいっしょにもらいました。
カメラ ミノルタ α303si Super 35mm電子制御一眼レフ。本当は電子制御じゃないカメラの方がいいんですけどね〜。あと、ファインダーのスクリーンも取り替えられるといいんだけど・・・。その後、カメラはα7になり、α303si Superは子供のオモチャとなって、シャッター幕破損。α7もα700になってからは使ってないですねー。
ソニー α700 APSサイズデジタル一眼レフ。 ソニーの初期のデジタル一眼はPCから制御可能で、撮影結果もPCですぐに見られます。 フィルムカメラでは、たとえば「ピントが合っているかどうか」は現像しないと分かりませんでした。 しかし、デジタルカメラではすぐに分かるので、ピントを少しずつずらしながら撮影し、結果を見てベストの位置をさがすことができます。 露出も結果を見て決定できます。

最近のはライブビューはできますが、最上位機種でもPCからは制御できません。 この辺はニコンやキヤノンの方が一枚上です。 写真レンズとは違い、天体写真アクセサリーはカメラにつなぐためのリングだけを入れ替えれば共通で使えるので、カメラだけ入れ替えるのは簡単なのですが・・・なのですが・・・天体用だけにカメラ買うのもなぁ。 それだったらWebカメラ買ったほうがいい気がする。

所有レンズ 24mm F2.8
50mm F1.4
35-70mm F3.5-4.5
80-200mm F2.8G
ミノルタ純正。 50mmは円形絞りではない、古いタイプです。
70-200mm F2.8G SSM 80-200mm F2.8Gの進化系。これを買う決め手になったのは最短撮影距離が1.2mになったこと。80mmといったらポートレートの代表的な焦点距離ですが、旧80-200は最短撮影距離1.8mで、室内ポートレートには使えません。 他にもフォーカス時に前枠が回転しない、花形フードでPLフィルタ操作用の穴がある、純正テレコンの設定がある(旧80-200は後玉の枠が干渉して使えなかった)、三脚座が外せるなど、改良点満載。
28-75mm F2.8 (A09) タムロン製。 普段使いにはもう少しズーム倍率があった方がいいけど、10倍はいらん・・・。
17-50mm F2.8 (A16) タムロン製。 カメラがAPSサイズのデジタルカメラになったので、A09では広角側が少し足りないと感じることが増え、買い足しました。 状況によってA09かA16のどちらかを使っています。 どちらでもよい場合はA09です。 A16はAPSサイズ専用なので、周辺減光が若干気になるかも。

FC-76E
FC-76E / EM-1と三脚
寮の屋上にて
FC-76EwithDEMIO
撮影風景 / 静岡県磐田市
太平洋岸自転車道駐車場にて

▲戻★ パーツの組み合わせ

▲戻★ 撮影場所

 お星様を撮るのに、機材よりも重要とも言えるのがこの「撮影場所」です。同じ人が星空を見ても、空が明るいところと暗いところでは見える星の数が全然違います。写真も同じで、空が明るいと暗い星がバックに埋もれて写りません。

 基本的には街の明かりのない、暗いところを探します。南の空を撮りたければ南に街がないところを、北の空を撮りたければ北に街がないところを選びます。星を見るだけならばこれでいいんですけど、いろいろ機材を持ち込むので、平らな地面があって、車で直接入れて、街灯がないところを探さないといけません。

 静岡県西部に住んでいた頃は、南の空を撮影したい場合には海まで出てしまえば、その南には何もありません。で、静岡県の西部には「太平洋岸自転車道」というのがあって、その利用者のために駐車場があったりします。街灯もなく、防風林と堤防に囲まれているので風も弱く、なかなかの穴場です。だいたいの写真はこの駐車場で撮影していました。北天はダム行って撮ってたな。

 海の近く(というか水の近く)は「レンズに結露する」っていう問題があるんですが。

 欠点としては普通の人が入れる駐車場なので、撮影中にライトをつけた車が入ってくる事があることと、周りが囲まれていて快適なのはいいんですけど、その代わり低空が撮影できない(お星様は東から西に動いているので、撮影時間が制限されるということにもなります)ことでしょうか。

▲戻★ 天候

 あとは重要なのが天候です。もちろん、くもっていては星は見えませんし、晴れているようでも、大気の状態によっては星がぼやけたり、暗い星が見えなくなったりします。傾向として、昼間の空が青いほど、星ははっきり見えるようになるようです。

 天気がよく、暗い星までよく見えていても、星が瞬きをしているように見えることがあります(太平洋側の冬に多い)。惑星などを撮る場合のように、拡大撮影をするときには大きな影響を受けますが、星野撮影ではそれほど多きな影響は受けないでしょう。とにかく、暗い星まで見えるきれいな空、これが大事です。

 撮影開始時には晴れていても、撮影中に曇ってしまうことがあります。丹念に時間をかけて赤道儀・望遠鏡の向きを合わせた直後に曇りだした日には、ものすごく悲しいものがあります。こうならないように、天気は事前にチェックしておきます。新聞やテレビで天気図・気象衛星ひまわりの映像を見ておくのがいいでしょう。

 最近ではインターネット上で現在のひまわりの映像を見ることもできるので、私はもっぱらこれを利用しています。サーチエンジンでサーチすればいくつか出てくると思いますが、私は日本気象協会 tenki.jp(旧名称: 防災気象情報サービス)や気象庁のページを利用しています。 撮影中に曇ってしまうこともあるわけですが、ひまわりの画像を事前にチェックしておけば、晴れる見込みがあるのかないのかもなんとなく見当がつくので便利です。本当はモバイルしてその場で見れると便利なんでしょうけど。

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