一部繰上返済の計算の基本は、繰上返済時点での借入残高を計算し、返済条件を再設定して各数値を再計算し、必要があれば借入残高の差額を求める、という形である。 再計算にあたっては返済期間 \(n\) ・返済額 \(p\) ・利率 \(r\) ・借入残高yのうちのいずれか3つを決め、残りの一つを再計算することになるが、実際には \(r\) は変えられないため、残りの \(n\) ・ \(p\) ・ \(y\) のうちのいずれか2つを決定し、余ったパラメータを再計算する。組み合わせは以下の通り。
\(n\) ・ \(p\) を決める: 返済額と返済期間を決め、 \(y\) を逆算し、繰り上げ額を求める。
\(n\) ・ \(y\) を決める: 繰り上げ返済額を決め、期間を再設定し、毎月の返済額を求める。
\(p\) ・ \(y\) を決める: 繰り上げ返済額を決め、毎月の返済額を再設定し、返済期間を求める。
さらに、決定する2つのパラメーターのうち、どちらかだけ変更するのか、あるいは両方変更するのかによって、全部で9通りの計算があることになる。
\(n\)
・
\(p\)
を決め
\(n\)
のみ変更
| 期間短縮型繰上返済。返済額はそのまま、返済期間を変更して、繰上返済する額を求めます。
|
\(p\)
のみ変更
| 返済額軽減型繰上返済。返済期間はそのまま、返済額を少なくした場合に繰上返済する額を求めます。
|
\(n\)
・
\(p\)
とも変更
| 期間短縮型+返済額変更
|
\(n\)
・
\(y\)
を決め |
\(n\)
のみ変更
| 返済額変更。繰上返済はせずに期間を変更し、月々の返済額を求めます。
|
\(y\)
のみ変更
| 返済額軽減型繰上返済。返済期間を変更せずに繰上返済した場合に、月々の返済額がいくらになるかを計算します。
|
\(n\)
・
\(y\)
とも変更
| 期間短縮型+返済額変更
|
\(y\)
・
\(p\)
を決め |
\(y\)
のみ変更
| 期間短縮型繰上返済。返済額を変更せずに繰上返済した場合に、残りの返済期間を求めます。
|
\(p\)
のみ変更
| 返済額変更。繰上返済はせずに返済額を変更し、残りの返済期間を求めます。
|
\(y\)
・
\(p\)
とも変更
| 期間短縮型+返済額変更
| |
表を見れば分かるとおり、結果だけを見れば期間短縮型繰上返済・返済額軽減型繰上返済・返済額変更の3通りの方法およびその組み合わせになる。 返済額を固定すれば期間短縮型に、返済期間を固定すれば返済額軽減型になり、残りの2つの数字のどちらかを先に決め、もう一方を計算することになる。 どちらの数字を先に決めるかによって計算方法が違ってくるため、それぞれの型について計算方法が2通りある。
また、返済額の変更も繰上返済と同じように計算できることも分かる。返済額を増額して返済期間を圧縮すれば、繰上返済と同じような効果が得られる。以下、繰上返済と書いてあるものはすべて一部繰上返済のことである。
ゆとり償還(当初5年間は50年あるいは75年ローンで計算する方式。現在は新規申込は受け付けていない)の人は期間短縮型にすると突如として返済額がアップする(ゆとり償還期間が短縮される)ことがあるので、よ〜く考えること。
公庫利用でゆとり償還ではない場合は、段階金利の当初10年部分(2002年1月現在2.6%の期間)よりも先に11年目以降(同4.0%)の方の期間が短くなる。つまり繰上返済方式・額に関わらず、2.6%の期間は常に10年。
公庫の場合、繰上返済額は最低100万円である。また手数料(3000〜5000円程度)を取られる。
住宅ローン減税を受けている場合、12月末日時点でのローン残高で税控除額が決まる。12月に繰上返済を実行すると、1月に繰上返済を実行した場合より戻ってくる税額が少なくなる。2002年1月現在の税制の適用を受けているとすると繰上額の1%だけ違ってくる。500万円返済すれば5万円違ってきてしまう。繰上返済しようとしている月と、その次にやってくる1月の二回を計算して、総返済額の差と、税控除額の差をよく比べること。
期間短縮型の繰上返済や返済額変更(増額)を利用する場合、繰上返済あるいは返済額変更後の総返済期間(初回返済日から最終返済日までの期間)が10年を切ってしまうと、税額控除が受けられなくなるので併せて注意しなければならない。
元利均等の場合のみ挙げる。以下、 \(y\) は元金、 \(r\) は月利、 \(n\) は返済回数、 \(p\) は返済金額を表す。 \(y_i\) は \(i\) 回返済後の借入残高であり、 \(y_0\) は返済前なので元金そのもの、 \(y_n\) は返済終了後なので0になる。
返済額を求める式を変形し、 \(y\) について解く。 というか、 \(y\) にかかっている分数の逆数を両辺にかけるだけとも言う。
この式はどう使うかというと、利率と返済額と返済回数が与えられたときに、果たしてこのローンでいくらのお金が返せるんだろう? という計算に使う。 例えば、年利2.4%で毎月1万円、12回払いのローンで返せるお金(元金部分)は、月利 \(r = 2.4 / 100 / 12 = 0.002\) なので、
11万8454円になる。つまり、11万8454円を年利2.4%・12回払いで返すローンを組めば、返済額はちょうど1万円になる(元は同じ式なんだから当然)。
\(n\) を求める場合はちょっと面倒。 毎回の返済額の式を変形する。 \(y\) は元金。
おっと \(\log\) が出てきたが、高校数学をちゃんとやってれば大丈夫だよね。計算機で計算できるように底を変換。
底変換公式の性質から \(\log\) は常用対数でも自然対数でもどっちでもよい(もちろん、分子を常用対数にしたら、分母も常用対数にしなければならない)。
以下、有効桁8桁くらい(笑)で計算しているので、実際の金額等と結果は異なる(計算ミスもあるかもしれない)。 実際に繰上返済をする場合は受付金融機関でちゃんと計算してもらうこと。
1000万円、当初10年2.6%、11年目以降4.0%、元利均等方式、30年払。
5691290円が利息分。
繰上返済時点での借入残高を計算し、繰上返済額を引き、残り回数から返済額を計算する。要するに借入残高を求め、繰上返済額を引いた後、新たなローンを組み直すと思えばいい。一番簡単なパターン。例えば、6年返済後に200万円を繰上返済する場合、繰上返済時点での借入残高は、
ここで200万円を繰上返済すると借入残高は6570495.6になる。これを元金として、当初4年間2.6%、以後20年間4.0%のローンを組み直せばよい。当初4年間の返済額は、
となり、40033.971 - 30691.695 = 約9342円安くなることが分かる。前半戦終了時の借入残高は、
後半戦の返済額は、
となり、後半部分も返済額が安くなることが分かる。 総返済額は
となり、15691290 - 14702235 = 989,055円得になる(払う利息が少なくなる)。これが繰上返済の効果である。
とゴチャゴチャ書いたが、要するに元金だけ異なるローンを計算しているのだから、支払額を(繰上後の元金)/(繰上前の元金)倍すれば簡単に求まる。実際、
である。4年も経ってやっと気づいた(笑)。
まず、繰上返済時点での借入残高を計算する。次に、新しい返済額から返済できる元本の額を求める。借入残高と返済可能元金の差額が繰上返済額である。例えば、返済開始10年後、つまり利率が上がるときに返済額を30000円にしたいとする。10年経過後の借入残高は7485951.0円。一方、月々3万円・年利4.0%・20年(240回)払で返せる元金の額は、
である。この差額、2535295.2円が繰上返済しなければならない額である。総返済額は
となり、元の15691290円と比べ、1,151,918円の得になる。
返済開始から10年の間に繰上返済する場合、繰上返済額の計算には前半部分の利率だけを使えばよい。後半部分の返済額は今までと同様にして求めればよい。例えば、返済開始3年後に返済額を3万円にすることを考える。3年経過後の借入残高は、
である。 一方、月々3万円・年利2.6%・27年(324回)払で返せる元金の額は、
である。この差額2334196.8円が繰上返済しなければならない額である。前半戦終了時の借入残高は、
となり、従って、11年目以降の返済額は(ここで初めて後半の利率を使う)、
となる。 総返済額は
となり、元の15691290円と比べて1,237,389円のお得となる。
期間短縮型で短縮したい期間を自由に定めたい場合、後半に繰上返済した方が前半に繰上返済するより話が簡単なので先に説明する。12年(144回)返済後に15年(180回)短縮したい場合、いくら繰上返済しなければならないかを求める。
10年返済後借入残高は先ほど計算したとおり7485951.0円。ここから利率4.0%になり、24回返済後の借入残高は、
である。一方、残りの返済回数は18年 - 15年 = 3年(36回)である。利率4%・返済額45363.391で3年(36回)返済をする場合に返せる元金の額は、
である。この差額 6976861.1 - 1536492.8 = 5,440,368.3円が繰上返済額となる。
総返済額は
となり、繰上前の15691290円に比べ、2,725,042円得になる。 返済から10年以上経過しているとはいえ、500万円繰上の効果は大きい。
3年後(36回返済後)に8年間(96回)短縮したい場合、いくら繰上返済しなければならないかを求める。 この場合、ちょっとややこしい計算になる。 まず、二段階金利の返済額の計算手順は以下のようになっている。
\(y_0\) ・ \(n_0+n_1\) ・ \(r_0\) から \(p_0\) を求める。
\(y_0\) ・ \(n_0\) ・ \(r_0\) から \(y_1\) を求める。
\(y_1\) ・ \(n_1\) ・ \(r_1\) から \(p_1\) を求める。
ただし、
\(y_0\) : 借入額
\(n_0\) : 前半の返済回数(通常は120回)
\(r_0\) : 前半の月利
\(p_0\) : 前半の返済額
\(y_1\) : \(n_0\) 回返済後の借入残高
\(n_1\) : 後半の返済回数
\(r_1\) : 後半の月利
\(p_1\) : 後半の返済額
変数は8個あるが、このうち \(y_0\) ・ \(n_0\) ・ \(n_1\) ・ \(r_0\) ・ \(r_1\) を決めると、残りの \(p_0\) ・ \(p_1\) ・ \(y_1\) は自動的に決まってしまう。 つまり、独立な変数は5つである。 これを逆にたどってある時点での \(y\) を求め直し、その時点での実際の残高との差額を繰上返済額とすると、
\(n_1'\) ・ \(r_1\) ・ \(p_1\) から \(y_1'\) を求める。
\(n_0'\) ・ \(r_0\) ・ \(y_1'\) から \(y_0'\) を求める。
ことになる。 公庫の繰上げ返済の場合、後半部分から返済回数を差し引く形になるので、 \(n_1'\) は \(n_1\) から短縮したい返済回数を引いたもの、 \(n_0'\) は前半の残り返済回数である。
よく見ると、この時点で \(n_0'\) ・ \(n_1'\) ・ \(r_0\) ・ \(r_1\) ・ \(p_1\) と5つの独立変数が出現してしまっている。 この5つから \(y_1'\) ・ \(y_0'\) と残りの \(p_0'\) が決まることになり、 \(p_0\) が変化してしまう。 前半の返済額 \(p_0\) は変化させないのが普通だから、実際には以下のように計算して \(p_1\) を調整する。
\(n_0'+n_1'\) ・ \(r_0\) ・ \(p_0\) から \(y_0'\) を求める。
\(y_0'\) ・ \(n_0'\) ・ \(r_0\) から \(y_1'\) を求める。
\(y_1'\) ・ \(n_1'\) ・ \(r_1\) から \(p_1'\) を求める。
今までの返済回数を \(m\) とすると、 \(n_0'=n_0-m\) であり、繰上げ返済直前の残高 \(y_m=y_{n_0-n_0'}\) と \(y_0'\) との差額が繰上返済額になる。
実際に冒頭の例を計算してみる。 返済開始から3年経過しているので \(n_0'\) は120-12*3=84、返済期間を8年短縮したいので、 \(n_1'\) は(20-8)*12=144、 \(n_0'+n_1'\) は228になる。 \(r_0\) は2.6/100/12=1.0021666667、 \(p_0\) は40033.971だから、この返済条件で返済できる元金は、
一方、現在の借入残高は、
したがって、この差額 9313078.9 - 7196747.8 = 2116331.1円が繰上返済額となる。返済開始時から10年経過後の借入残高は、繰上返済から7年経過時点での残高として計算できる。
後半の返済額は、
となる。
総返済額は
となり、繰上前の15691290円に比べ、2,533,054円得になる。なんと、繰り上げた額以上に将来の返済金額が少なくなる。早めに繰上返済すれば、繰り上げる額に比較してより大きな効果が得られることが分かるだろう。
繰上返済額を先に決めて返済期間を計算すると端数が出る。端数が出た分は適当に丸め込んで、返済期間を先に決める方法で繰上返済額を再計算しなければならない。
返済期間を先に決定する方法と同様、前半期間中に繰上返済する場合と後半期間中に繰上返済する場合で計算方法が違う。とりあえず後半返済中に繰上返済する場合を考える。この場合は素直に返済期間を求め、そこから繰上返済額を再計算すればよい。例として返済開始15年後に200万円繰上返済してみる。10年返済後借入残高は7485951.0だったから、返済開始15年経過後の借入残高は、
ここから繰上返済分200万円を引き、以後の返済回数を求める。
約109回で完済することが分かる。元は15年180回残っていたから、180 - 109 = 71回(約6年)返済期間が短くなることが分かる。
これを元に正確な繰上返済額を計算しなおす。nは切り上げるか、切り捨てるかしなければならない。資金に余裕がある場合は切り捨てればよいし、なけなしの虎の子をはたく場合は切り上げればよい。ここではキリのいいところで108回(煩悩の数 ちょうど9年)にしてみる。108回で返済できる元金は
となるから、差額 6132739.8 - 4108642.2 = 2024097.6円が繰上返済額となる。
総返済額は
となり、繰上前の15691290円に比べ 1,242,066円得になる。
では前半返済中に繰上返済する場合はどうなるか。前半返済中に繰上返済する場合、前半期間中に返済が終了してしまう場合と、後半期間までかかる場合とに分かれる。とりあえず、前半期間の返済額・利率で返済期間を計算してみて、前半期間中で終わる結果が出れば期間から繰上返済額を再計算すればそれでおしまい。終わらない場合は「前半返済中に繰上返済」で説明した方法で後半の返済額を再計算する。
例えば、4年(48回)返済後に200万円繰上返済する場合を考える。返済開始4年後の借入残高は、
ここで200万円繰上返済し、7071951.3を借入残高として返済期間を計算してみる。
あと223回(約18年半)かかるが、実際には72回返済したところで前半期間が終了してしまうため、前半期間内には返済が終了しないことが分かる。キリのいいところで222回(18年半)かけて返済することにすると、後半は222-72=150回。元は240回だったから、240-150=90回(7年半)返済期間が短くなる事がわかる。返済できる元金(前半の利率で計算する)は、
差額の2022646.3円が繰上返済額となる。前半終了後の借入残高は、
後半の返済額は、
となる。総返済額は
となり、繰上前の15691290円に比べ 2,347,154円得になる。
なお、普通は償還表を眺めて、残高の差額が所望の額になるところまで引き抜くことで繰上額を決める。この条件でローン計算機に償還表を書かせると、4年(48回)後の残高は9,071,975円になっていて、そこから200万を引いた7,071,975円くらいが残高になるのは137回か138回だから、138回(7,049,379円)を採用すると、138−48=90回返済期間が短くなり、9,071,975−7,049,379=2,022,596円が繰上返済額になる。若干数字が違うのは償還表では小数以下を切り捨てた上で積算しているからである。
この理屈だと償還表をわざわざ書き直す必要がないのだが、2段階金利の場合は前半戦の金利部分が短くなってしまう。公庫では後半部分から引き抜くことになるので、繰上額を計算で求め直した上で、償還表を書き直している。
返済額変更は一部繰上返済とは異なるが、返済額を増額することで返済期間が短くなり、総返済額も減るなど、繰上返済と同様の効果が期待できる。また、使う式も繰上返済と同じである。繰上返済の場合は借入残高を求めた後、繰上返済する額を引いてから次の計算を行ったが、この額がゼロになる。計算方法も期間から返済額を求める方法と、返済額から期間を求める方法の二通りがある。
なお、繰上返済と同じような効果を期待したい場合は、期間は短く、返済額は多く設定するが、逆に設定することもできる。返済期間を長く設定すれば返済額は少なくなり、返済額を少なく設定すれば返済期間が長くなる。月々の負担を減らしたい場合にこのような計算をするが、繰上返済と共に用いない場合は総返済額が増加することに注意する必要がある。公庫では特定の条件(客観的に生活が苦しいと認められるような条件)を満たせばこのような変更も可能である。
返済回数を先に決める場合
返済額変更時点での借入残高を求め、その残高を元に新たにローンを組みなおすと思えばよい。例えば、3年返済後に返済回数を8年間(96回)短縮して、返済開始からの返済回数を264回にしたい場合、返済額変更時点から数えると、2.6%の期間は7年(84回)、4.0%の期間は8年減って12年(144回)、合計では19年(228回)となる。3年返済時点での借入残高は以下のとおりである。
これを新たな元金として、当初7年2.6%、以後12年4.0%のローンを組みなおせばよい。当初7年間は、
2.6%金利終了時の借入残高は、
以後の返済額は、
となる。返済期間を8年縮めた代償として月々の返済額が1万円ちょっと増えた計算になるが、総返済額を計算してみると、
となり、返済額をアップしない場合に比べて15691290 - 13865156 = 1,826,134円お得となっていることが分かる。
この計算に用いた期間短縮条件は期間短縮型繰上返済の「前半返済中に繰上返済」と同じ条件だが、返済額変更の方がお得度が小さいことが分かる(総額で70万円くらい)。同じ時期に同じように返済条件を変更する場合、預貯金金利や住宅ローン特別控除(税額控除)の効果を考えなければ、返済額変更よりも期間短縮型繰上返済の方がより大きな効果を期待できる。
返済額を先に決める場合
返済額変更時点での借入残高を求め、これを元に返済回数を求める。求めた値は一般的には整数にはならないため、この値を元に適当な返済回数を再設定し、「返済回数を先に決める場合」と同じ方法で再計算する。例えば、返済開始4年後に返済額を約1万円増やして5万円にする場合を考える。このときの借入残高は、
利率2.6%・返済額5万円の場合、返済期間は、
約231回となる。返済期間231回として再度計算をやり直すと、当初6年間は
2.6%期間終了後の借入残高は、
以降の返済額は、231 - 72 = 159回払いであることに注意すると、
となる。総返済額は、
となり、変更前の15691290円に比べて1,512,677円のお得となる。
全部のローンについてお得度を計算し、一番お得度の高いものから繰り上げる。一般的には、利率の高いもの・返済期間の長いものから繰り上げた方が得、ということになっている。「じゃあ、利率が高くて返済期間が短いローンと、利率が低くて返済期間が長いローンがある場合、どっちを繰り上げた方が得なの?」という人は・・・自分で計算してください(このページはそのための情報を提供するためのページですから)。 繰り上げ返済の最適化?の矛盾あたりが参考になるかと。 返済額変更を考えずに、預貯金金利を考えて期間短縮型繰上返済を繰り返すパターンを考えるともっと泥沼になります。 というか、高利の自動車ローンを抱えるなら、元から住宅ローンの返済期間を長めにとっておいて、自動車は即金で買えるように準備しておいた方が得のような気もする(笑)。 そういう意味でもガリガリに身を削って繰り上げてはいけません(笑)。
元金均等は元利均等の場合に比べ返済回数の計算は簡単なのだが、元金均等は月々の返済額が変わる(減っていく)ため、総返済額の計算が、言い換えるとお得度の計算が面倒である。 \(p\) を元金部分の返済額とする。 これに利息を足したものが毎月の全返済額になる。 初回、つまり \(n=1\) の利息は \(r\cdot y_0\) である。 2回目、 \(n=2\) の利息は \(r\cdot y_1\) である。 つまり、 \(n\) 回目支払時の利息は \(r\cdot y_{n-1}\) である。
元金均等の場合、 \(y_n\) は簡単に求まって \(y_0-n\cdot p\) だから、 \(n\) 回目までの総返済額 \(T_n\) は
となる。 (\(*\)) で1から \(n\) までの和を求める公式
を使っている。
この式の意味を考えると、初回の返済額 \(p+r\cdot y_0\) を \(n\) 回払った上で、返済のため減った利息分を取り返している形になっている。 2回目は元金1回分、3回目は元金2回分多く利息を払ってしまっているので、 \(n\) 回目には元金 \(n-1\) 回分多く利息を払っていることになる。 この総和が \(p\cdot n\cdot (n-1)/2\) である。
同じローンを元金均等で組むと、月々の元金返済額は10000000 / 360 = 27777.778円になる(実際の返済額はこれ+利息)。 10年返済後の総返済額は
この時点での残高 \(y_{120}\) は
なので、以後20年分の返済額は
になり、総返済額は \(5503611.0+9344444.0=14848055\) 円である。 元利均等の15691290円に比べ、843235円少ないことが分かる。
「期間短縮型繰上返済」の「繰上返済額を先に決める場合」と同じ条件、つまり、15年返済後に200万円繰上返済してみる。 短縮される期間の計算は簡単で、200万円を月々の元金返済額で割ればよい。つまり、2000000 / 27777.778 = 72回(6年)短くなる。 10年から15年までの間の返済額合計は、
残高は \(10000000\cdot (360-180)/360\) でちょうど500万円である。 200万円を繰り上げると残債は300万円となり、残りの支払回数は108回なので、
となるので、総返済額は
となり、元金均等で繰上げ返済しない場合に比べて総返済額が963,333円少なくなる。
Copyright (C) 2002-2019 akamoz.jp
$Id: advance.htm,v 1.8 2019/04/09 14:33:57 you Exp $