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期間短縮型返済額軽減型

 Apacheのログを見ていると某所から飛んでくる人が意外に多いので。ちなみに丸めを考慮してないのは、例えば100万円で丸めまで考慮して計算して、1000万円の人は単純に10倍すればそのまま使えるか、というと、そうはいかないから。傾向をつかむためには上から数桁見ていけば充分だろう。このコンテンツの表紙に書いてあるけど、結局は金融機関に問い合わせなければ正確な数字は分からない。ちなみにローン計算機で償還表を書かせると、うちの場合は銀行から送ってきたやつと数字が合うが、他の人は合わないかもしれない。

期間短縮型返済額軽減型の損得

 1000万円を3.0%・35年(420回)で借りたとしよう。計算してみると月38,485円。総支払額は16,163,700円。家を建てて1年後、宝くじで100万円当たったので繰上返済することになった。さあ、期間短縮型返済額軽減型、どちらで繰り上げようか?

 12回支払後の残高は9,835,936円。100万円返すと残りは8,835,936円。期間短縮型の場合は返済額を38,485円のまま計算すればよく、返済回数は残り341回+半端分になる。総支払額は38,485×12+1,000,000+38,485×341+半端28,385+利息71=14,613,661円。総支払額は1,550,039円少なくなった。

 一方、返済額軽減型の方は残り支払回数408のまま、月々の返済額を再計算する。34,572円とちょっとになる。総支払額は38,485×12+1,000,000+34,572×408=15,567,196。総支払額は596,504円少なくなった。

 これを見ると圧倒的に期間短縮型の方が有利に見えるが、返済額軽減型は月々の支払が減るから、その分余剰資金が増える。これは受け取る預金金利の増加や、繰上返済資金の増加につながる。また、ローン残高の減り方が遅いから、住宅ローン減税で戻ってくる税金も多くなる。これらまで考えるとどちらが得なのだろうか?

究極の姿

 月々一定の収入のある人が、ある金額のローンを組み、その月支払額には多少余裕があるとする。余剰分を毎月繰り上げることにした場合、得なのは期間短縮型か、返済額軽減型か? 実際に数字を入れたほうが分かりやすいだろうから、先ほどと同じく、1000万円を3.0%・35年(420回)で借りたとしよう。月々の支払は38,485円。月に50,000円返済に充てられるとすると、初回の繰上返済額は11,515円になる。これをAさんは期間短縮型で、Bさんは返済額軽減型で繰り上げたとする。

 初回支払い時は条件がまったく同じだから、二人とも利息は同じ。繰り上げている額は同じだから、繰上後のローン残高も同じである。Aさんは返済期間が短くなり、Bさんは返済金額が少なくなる。具体的にはAさんは残り418回と最後に半端を払うことになり、Bさんは返済額が約44円減って38,441円くらいになる。減った分は次回以降繰上に回す。ここで先ほどのように総支払額を計算してAさんの方がいくらいくらお得、と出したくなるのだが、もう少し我慢。

 2回目の支払い。両者とも支払い前の残高は同じ。だから利息は同じ。Aさんは1回目と同じく、月38,485円の支払いと、11,515円を期間短縮型で繰上返済する。Bさんは新しい月支払額の38,441円を払い、50,000円から38,441円を引いた残りの11,559円を返済額軽減型で繰上返済する。合計の支払額はどちらも50,000円で変わらない。そういう条件なのだから当たり前だ。返している元金は(支払額)−(利息)なのだから、支払額が同じで、利息が同じなら、返している元金部分も同じである。よって支払後のローン残高も同じである。

 これを繰り返していくから、両者の支払額とローン残高は毎月同じになることが分かる。結局、どちらの方法で繰り上げていっても、同じ期間で支払が終わり、総支払額も同じである。そういう意味では損得がない。

 昔は35年固定金利とか、毎月繰上返済とか、現実的には考えられなかったのですが、今はそういうサービスがあるんですね。公庫と民間金融機関の「フラット35」というのがそれ。金融機関によってサービスが多少異なりますが、普通預金残高が一定額を上回っている場合、その部分を勝手に、しかも無手数料で繰り上げてくれる、「自動繰上返済」というサービスがある金融機関もあります。これだと誤差や住宅ローン減税など他の要因を考えなければ本当に上の通りになります。

アクシデント発生

 もし、途中でどうしても100万円が必要になったとする。もう余剰金はないのだから、新たに借りるしかない。この場合、期間短縮型のAさんの場合は毎月の支払額が変わってないから、新しいローンの返済額は最大でも11,515円。返済額軽減型のBさんの場合は毎月の支払額が減っているので、新しいローンの返済額をもっと増やすことができる。

 新しいローンの利率が元のローンと同じならば、要するにローン残高が100万円増えただけの話である。さっきと同じ理屈で計算していけば、両方のローンを返し終わるのはAさんBさんとも同じで、総支払額も同じである。新しいローンの利率が元のローンよりければ、新しいローンを早く返し終わるBさんの方が得、ければAさんの方が得にな・・・

 ・・・ちょっと待て。本当にそうだろうか? 新しいローンの利率が元のローンよりい場合、実はBさんは目いっぱいの金額でローンを組む必要はないのである。もし、Aさんと同じ条件で新しいローンを組めば、新しいローンの支払額と支払期間はAさんと同じ、元のローンについても月支払額+繰上額はAさんと同じになり、先ほどの理屈で行くとやはり同じ条件で減っていく。つまりBさんはAさんと同じ条件にできる

 逆に、新しいローンの利率が元のローンよりい場合、AさんがBさんと同じ条件に持ち込むためには、元のローンの支払額を減らさなければならない(返済期間は当然延びる)。いろいろ条件はあるものの、公庫融資でもそういうサービスはあるので不可能ではないが、いずれにせよ面倒なのは想像がつくだろう。柔軟性は返済額軽減型の方が高い。

実際には?

 とりあえず、毎月繰上返済でシミュレーションしてみると、当然のように結果は同じになります。繰上返済の最低金額を100万円にしてみた場合、余剰金の多い・少ないをいろいろ変えてやってみると、時と場合によってどちらが得かが変わってきます。元金1000万円で計算しても差は数万円。ひとつはっきりしているのは、預金金利が上がると返済額軽減型の方が得、ということですが、預金金利が上がった場合は「繰上返済しない」という選択肢もあるため、やっぱり微妙。

 結局のところ、ギリギリで生活していて、何か臨時収入があって、その時に限ってポンっと返すなら単純に考えると期間短縮型が有利だけど、逆に返済額軽減型で生活の質を向上させる方向に使うという考えもありだし、生活水準を元のままにするなら、余剰金でさらに繰上返済もできるし、考え方次第ですね。手元にお金があると使っちゃいそうなら、積立定期とかにすればいいし。ギリギリの収入で、繰上は100万円以上として、預貯金・住宅ローン減税を考えないと圧倒的に期間短縮型が有利そうですが、住宅ローン減税を考えるだけでどちらが得か微妙になってきます。どちらが得か微妙なら返済額軽減型の方が安全でしょう。

 ある程度余裕があって、定期的に繰り上げるなら好きな方をどうぞ、ということになりそう。住宅ローン減税の関係で、基本的に毎年1月に繰り上げることになると思います。理論的には返済額軽減型の方が柔軟でしょうけど、これを使いこなすためには毎年の返済額を細かく調整していかなければなりません(返済額が少なくなった分、余計に繰り上げる必要がある)。冒頭で紹介した自動繰上のような場合は返済額軽減型の方がいいのかな。「とりあえず100万返しておくか」というアバウトなやり方の場合は期間短縮型の方がいいでしょう。

 私? 基本的にアバウトな人なので・・・。私の頃の公庫は期間短縮だけ手数料が3150円で、他は5250円だったりするし。

 住宅ローンは個人が使えるローンの中では、金額・期間・利率とも、大変有利な部類に入ります。とりあえず慌てて返すな!というところでしょうか。・・・それにしてもいいなぁ、自動繰上返済。

$Id: shorten-lessen.htm,v 1.1 2006/07/07 11:04:36 you Exp $